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良い日と悪い日の話し 第32回写経の会の法話

こんにちは、朝晩の気温差がはげしくて、身体がついていきませんね。
こちらは慈悲の心と人の縁を、千葉市から伝え広めるお寺 日蓮宗 本円寺のブログです。
今回は第32回 写経の会にてお配りした教箋と、お話しした法話【良い日と悪い日の話し】についてお書きします。

良 い 日 と 悪 い 日 の お 話 し

― 自分を正しく信じる ―

その昔、都で暮らす一家が田舎の方からとても美しい娘を迎える事になりました。
両家で何度も細かい相談をして、結婚式の日取りもめでたくまとまりました。
しかし当日になり、都の方の一家の主人は馴染みの占い師のもとへ行き、
この日が祝い事にふさわしい日かどうか念のため占うことにしました。
相談された占い師は、今日結婚するにもかかわらず、当日になってそれが良いか悪いか占ってくれとはどういうことだと
心の中で怒り、一つ意地悪をしてやろうと考えました。

占い師は難しい顔をして
「今日の星の動きは占いごとに適さないので、明日にしたほうがいいですよ。」
と真剣な顔で、適当に答えました。

男は占い師の話を聞くと、すっかり田舎の人との約束を果たす気を無くしてしまい、
結婚は一生の問題だから、占い師の言う通りに良い日であると言われた明日にすることに勝手に決めてしまいました。

一方、それを知らない田舎の方の娘の家では、朝早くから結婚式の支度に大わらわでした。
人を集めて部屋を清め、念入りに掃除したり様々なご馳走を用意したり、都に持って行く荷物をまとめたりと忙しく動きまわっていました。
娘も化粧をして美しく着飾り、ようやく昼近くになっていつ都の人がやって来てもよいように、準備が整いました。

しかし、いくら待っても都の人が来る気配はなく、とうとう夕方近くになり、娘もすっかり悲しくなって泣き出しました。
田舎の人はすっかり都の一家のだらしなさにあきれ、以前より娘を嫁にしたいと望んでいた同じ村の男に、その日の内に嫁入りさせてしまいました。

その翌日、占い師の言葉を信じ切った都の男は、今日こそは良い日だと、朝早く一家そろって村へやってきました。
しかし、娘は昨日のうちに、他の男へ嫁に行っております。それを知った男は驚き、
「娘をくれると約束したじゃないか。」
と怒りを爆発させました。
それを聞いた田舎の男は、
「あれだけ念入りに相談しておきながら、相談もせず勝手に大切な日を変えてしまうとはあきれたもんだ」
と反論しました。
男は占い師の話しをし、今日が良い日である事を伝えましたが、一日中待ちぼうけをさせられた田舎の人は決して耳を貸しません。
都の男は、
「一日くらい遅れたからといって、前もって約束した娘を他にやるなんていい加減なのはどっちだ。」
と怒鳴り、とうとうとっくみあいの喧嘩になってしまいました。

この様子を、偶然通りがかった賢者が静かな目で見つめていました。
そして、大きな声で、
「星の動きなんかより、娘を迎える事実の方がよっぽどめでたくて良い事であろう。それを行う日が最良の日である。
今日は良い日だそうだが、つまらない喧嘩をしているのを見てると、とても良い日などとは思わない」
と笑いながら唄を唱えました。

星の動きで善し悪しが
決まる事などありゃしない
事の善し悪し幸不幸
星は空から見るばかり

都の一家は自分たちの身勝手な行いから占い師を怒らせ、またそのために娘をもらい損ね、
あげくの果てに大喧嘩を引き起こして顔や手足にあざや傷を作り、すごすごと引き上げていきました。

自分の都合を押し通そうとする時、人は自分に近い者の意見の良い所だけを聞きがちです。
しかし、往々にして第三者からの意見の方が、的確な事もよくある事です。
人生に失敗は付き物ですが、意地を張らずに生きるのはとても大切な事です。
信じていい事なのか、違うのか、心が平静でないと振り回されるはめになってしまいます。

私達も都の男の一家のようにならないように、気をつけましょうね。

平成二十八年四月 写経の会(第三十二回目) 法 話

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