実はとても身近な仏教

身近な仏教のことば

挨拶

挨拶(あいさつ)
大変身近な言葉ですが、この「挨拶」という言葉は、もともと仏教語なのです。
挨は「押す」こと。拶は「せまる」という意味を持ち、「挨拶」は前にあるものを押しのけて進み出ることをいいます。
禅家では「一挨一拶(いちあいいっさつ)」といって、師匠が門下の層に、または修行僧同士があるいは軽く、あるいは強く、言葉や動作でその悟りの深浅を試すことがあります。これが挨拶なのです。
挨拶は大事ですね。
懐石

懐石(かいせき)
懐石料理といえば、本来茶席で招待した客に茶をすすめる前に出す手軽な料理のことで、茶懐石とも呼ばれています。
仏教では「非時食(ひじじき)戒」という定めによって、修行僧は正午から翌日の暁まで、食事を禁止されていました。
そこで修行僧はあたためた石を布に包んで腹に入れ、飢えや寒さをしのいだのでした。
あたためた石を懐に入れて、腹をあたためる程度に腹を満たす料理という意味から、懐石料理となりました。
くしゃみ

くしゃみ
ある時、お釈迦さまがくしゃみをしました。すると、弟子たちが一斉に「クサンメ」と唱えて、師の健康を願ったということです。
「クサンメ」とはインドの言葉で「長寿」という意味です。インドではくしゃみをすると命が縮まるといって「クサンメ」と唱える風習があったといいますから、これは長寿を祈る呪文だったのかもしれませんね。くしゃみはそのクサンメから転訛したものだそうです。
仏教の言葉とは少し違いますが、載せてみました。
愚痴

愚痴(ぐち)
お釈迦さまは「人間が苦悩する原因は、心のなかに宿る煩悩(ぼんのう)にある」と教えられました。
貪欲(とんよく)=むさぼり欲しがる心
瞋恚(しんに)=いかり腹立つ心
愚痴(ぐち) =愚かな心
この三つは百八種の煩悩のなかでも特に強力なものなので、三毒の煩悩といいます。
愚痴とは、目先のものにとらわれて、正しい判断ができない愚かな心をさしているのです。
玄関

玄関(げんかん)
家の正面にある入口を、「玄関」と呼びますね。
この玄関が仏教語なのです。本来は建物の名前ではなく、【玄】妙な道に入る【関】門という意味で、奥深い教えに入る手始め、糸口を指していました。「仏門に入る」などがそれにあたります。
この仏教用語が建物の名前となり、寺の客殿に入る入口を指すようになりました。
やがて室町時代から桃山時代にかけて盛んになった書院造りに、その形式が採り入れられましたが、まだ庶民住宅には造ることを許されていませんでした。
江戸時代になって民家や一般の建物にも広まり、明治以降は現在のように、家の正面入口を玄関と呼ぶようになったのです。
無事

無事(ぶじ)
「無事に帰りました」「おかげ様で無事に暮らしております」など、「無事」は日常よく使われる言葉です。「平穏無事」という言葉もあります。
無事は本来仏教用語で、精神的なわずらいのない状態をさします。こだわりのない、障りのない心の状態をさしているのです。
「無事これ貴人なり」と仏典にありますが、常識的な思想や分別に基づいて仏とか悟りを求めることをせず、ただ人間の本来の姿に徹したそのままの人こそ尊ぶべきだという意味です。

身近な仏教行事

初詣

初詣
12月31日、除夜の鐘がまだ聞こえているときから、松の内(1月7日)までの間に、神社仏閣にお参りすることをいいます。
江戸時代までは、氏神様やその年の恵方の神様に参る、恵方参りが中心でした。
今では七福神めぐりをしたり、神社仏閣をはしごしたり、お正月で人出が多い場所に神社やお寺の名前を見るようになりました。
初詣は前の年を無事に過ごせたことを感謝しつつ、今年の無病息災を願うのが本来の目的なのです。
節分

節分
節分とは季節の分かれ目のことをいい、本来なら「立春」「立夏」「立秋」「立冬」の四回ありますが、現在では立春の前日だけを指すようになりました。
節分の時は家の玄関に悪霊が入ってこないようにするため、とげのある柊(ひいらぎ)や臭い鰯の頭を飾るのです。
そのあと「鬼は外、福は内」と言いながら、鬼に向かって豆を投げて外へ追い出します。
仏教では鬼は人の煩悩を表し、煩悩を追い払うために豆=魔減を当てるとされています。
お盆

お盆
インドの言葉のウランバーナを、中国では漢字で音写して、盂蘭盆(うらぼん)と書きます。その省略がお盆なのです。
ウランバーナというのは倒懸(とうけん)といって、逆さ吊りの苦しみからの救いを意味しています。
お釈迦さまのお弟子の目連(もくれん)尊者が、餓鬼道に落ちてしまった自分の母親を、お釈迦さまの教えによって僧侶たちに食物を施し、供養することで救い出すことができたという言い伝えによるものです。つまり、餓鬼道や地獄に落ちて苦しんでいる霊を救うために供養を営むことをいいます。
現在のお盆の形は、先祖の霊が帰ってくるという日本古来の言い伝えと結びついたものです。
盆踊り

盆踊り
平安時代、空也上人によって始められた念仏踊りが、盂蘭盆の行事と結びつき、精霊を迎える、死者を供養するための行事として定着していきました。鎌倉時代にはそれを一遍上人が全国に広めました。それ以降は、宗教性と共に芸能性にも重点が置かれる念仏踊りが生み出され、また地方によって様々な衣装や振り付け、道具、音楽などを用いて踊られるようになりました。
除夜の鐘

除夜の鐘
除夜には古い年を払って、新しい年を受け入れるという意味があり、大晦日には煩悩の数である108回の除夜の鐘がつかれます。
鐘をつくことは古い年を取り除くという意味がある仏教行事の一つで、鐘の音には邪気を払う力があるとされています。
除夜の鐘を聞いている間に旧年の反省をし、厄を追い払うのです。