住職の想い

住職:草切榮隆

住職のプロフィール

草切榮隆
1970年(昭和45年)、北海道函館市生まれ。
幼少より、辛く悲しい思いを抱える人や悩み多き人々に対し、「自分は何ができるのか。どうしたら力になれるのか」を深く考えるようになり、僧道を志す。
中学卒業後、函館市内の寺に入る。修行の傍ら函館西高校(定時制課程)で学び、師匠並び同校教師のすすめで立正大学仏教学部宗学科に入学。千葉県市川市にある日蓮宗大本山 中山法華経寺に随身しながら、法華経を中心とした仏教の思想と文化を広く学ぶ。
96年より千葉市在住。
2012年3月より、本円寺第三十九世現住職となる。日蓮宗 声明師。

住職の想い

「ここにくれば、なんとかなる」皆の心の支えとなり、集いの場としての“お寺”をつくる

仏教には「慈悲」という教えがあります。
「慈」は、人を安心させる優しさ。または安心できるスペース。子が父親に見守られているような、安心感がある場所です。
また、「悲」は相手の心に寄り添い、一緒に泣き、共に悩んであげること。母親の愛情のような心です。
このように外側と内側から、困ったときや辛いときに一緒に悩み、共感し、助ける心が「慈悲」。私はこの「慈悲」の精神を自らの根幹とし、辛い気持ちを抱えた方々に「一人で悩まないでほしい。何かお役に立てないだろうか」と考えてきました。そしていま、お寺の敷居を取り払い、皆さんの集いの場、交流の場となるお寺をつくりたいと思っています。

お寺は子どもたちの遊び場でもあり、老若男女が集う交流の場という側面ももっていました。また、“駆け込み寺”という言葉があるように「困ったときはお寺に行けば守ってくれる」といった人々の心の強い支えであり、救いの場でもあったのです。
悩みの種類は世代によっても異なるでしょう。お年寄りなら健康の問題、若い人なら仕事や人間関係が中心かもしれません。そうした人生における様々な悩みや迷いが、ここに来ればなんとかなる。そう思えるような、心の支えとなる場にしたい。人間関係が希薄になっている昨今、私はさらにその思いを強くしています。

ただし、それは私一人の力ではできません。多くの方々のお力がいります。
例えば連れ合いを亡くして悲しみに暮れる人がいたとしたら、同じ悲しみを経験した人がやってきて寄り添う。同じ目線に立って思いを受け止めてくれる人がそばにいるだけで、「自分は一人じゃないんだ」と心励まされるのではないでしょうか。
自分も出家して31年目になりますが、人生経験の深い方々に比べたらまだまだ“洟垂れ小僧”です。私自身もその集いの中で、学ばせていただくことは多いでしょう。

いろいろな立場、性格の老若男女が気軽にふらりと立ち寄って、学び交流し、心の支えとなるお寺。
640年近くにわたり当地で愛されてきた本円寺を、そんな集いの空間にしたい。
それが私の理想であり、心からの願いであり、世界の全体が幸せになる為の方法の一つでもあると想うのです。

本円寺第三十九世現住職 草切榮隆