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第21回 写経の会の法話

こんにちは、こちらは慈悲の心と人の縁を、千葉市から伝え広めるお寺 日蓮宗 本円寺のブログです。
今回は第21回 写経の会にてお配りした教箋と、お話しした内容についてお書きします。

お 月 様 の 教 え

― 本当の善い行い ―

お釈迦様が祇園精舎におられたとき、このようなお話をされました。
これはその昔、菩薩であった私が兎として生まれ変った時のお話しです。
その兎(お釈迦様)は、猿、キツネ、カワウソという三匹の友達と森の中に住んでいました。
兎は菩薩の転生でしたので、普通の動物と違って智慧がありました。
彼らは、食べる物が違うので、昼は各々別に行動していましたが、夜はいつも一緒でした。
兎は三匹に、悪いこと、ずるいことをしてはいけないという「戒」の話を。
また、自分だけ良ければいいという生き方ではなくて、他人のことも心配するべきですよという「布施」の話を。
また、生きているものとして道徳を守るべきですよという「正しい修行」の話などをしていました。

ある満月の夜、兎は修行をする決心を固めました。三匹の友人も誘いました。
皆、大変喜んで修行することに決めました。
そして修行をする期間が長くなるかもしれないという事で、まずそれぞれがえさを集める事にしました。
兎は、「修行が始まったら、えさをひとりで食べるのではなく、誰かに一部をあげてから食べるのですよ、それが布施ですよ」と、教えました。
次の朝、早速それぞれが別れ、まずカワウソが川で魚を見つけました。
キツネは畑仕事の人々が食べ残した肉とチーズのようなものを見つけました。
猿は木からマンゴーを取って来ました。
兎は草を食べればよいので食べ物を貯蔵する必要はありませんでしたが、その代わりに大きな悩みが出てきました。
食べる前に布施をしなくてはならないと自分で教えたのに、草を求めてくる人はまずいないと思ったのです。
三匹の友達の食べ物は人間も食べるので、簡単に施しをできるでしょう。何やらもやもやした気持ちでなりました。
そこで、「よし、誰かが食を乞うて来たら、この身体をあげよう。兎の肉を食べたがる人は、いくらでもいるだろうから。」と、覚悟を決めました。
兎は、修行のために命まで賭ける決意でした。

天にいる王『サッカ』は兎の決意に気付き、大変驚きました。
そして他の三匹も正直かどうか試してやろうと、乞食に変身して一匹ずつ訪ねました。そして食べ物をめぐんで欲しいと訪ねたところ、カワウソもキツネも猿も、喜んで自分のえさを施しました。
サッカは「ありがとう、後で来ますからその時にいただきます」と言って、三匹にえさを返して兎のところに行きました。
そして「何か食べ物をください」と、兎に頼みました。
兎は、「喜んで。すぐ準備しますので、薪を拾って火をおこして待っていて下さい」と言い、乞食の目の見えないところに行き、隠れました。
サッカは兎が見えなくなると、神通力で薪を集め、ごうごうと燃え立つ大きな炎を作りました。
火がついた事を確認した兎は、身体についている虫やほこりを落とし、そして走って火の中に思い切って飛び込みました。
兎は驚きました。ぼうぼうとうなる炎の中で、あっという間に丸焼きになると思っていたのに、この炎は熱いどころか異常に涼しかったのです。
兎は乞食に尋ねます。「善人よ、あなたの炎は威勢がよいのですが、私の毛一本も燃やせるほどの熱はありません。あまりにも涼しいのです。どうしたことでしょう」
サッカは答えました「賢者よ、私は乞食ではありません。あなたの修行にかかる気持ちがどれほど正直かと試すために、天から降りたのです」と。
そして「善行為を行うことは、どれほど大事かという事を後世の人々に知らせてあげます」と言って、山を絞り、液体を出して月に兎の形を描き遺しました。

本当の善の行いは、ずっとずっと残るものです。
それは歴史に残る言葉や物以外、「ありがとう」「おかげさまで」等という言葉にのって、いつまでも残るのです。

平成二十七年五月 写経の会(第二十一回目) 法 話

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