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父 母 恩 重 和 讃 (ふぼおんじゅうわさん)

父 母 恩 重 和 讃

あわれ同胞心せよ 山より高き父の恩
海より深き母の恩 知るこそ道の始めなれ

児を守る母のまめやかに わが懐中を寝床とし
かよわき腕を枕とし 骨身をけずるあわれさよ

美しかりし若妻も 幼児一人育つれば
花の顔いつしかに 衰え行くこそ悲しけれ

身を切る如き雪の夜も 骨さす霜のあかつきも
乾けるところに児を廻し 濡れたるところに己れ伏す

幼きものの頑是なく 懐中汚し背を濡らす
不浄をいとう色もなく 洗うも日々に幾度ぞ

己れは寒さに凍えつつ 着たるをぬぎて子を包み
甘きは吐きて子に与へ 苦きは自ら食うなり

幼児乳をふくむこと 百八十斛を越すとかや
まことに父母の恵みこそ 天地の極りなき如し

若し子遠く行くあらば 帰りて其面見るまでは
出ても入りても子を憶い 寝ても覚めても子を思う

髪くしけずり顔ぬぐい 学びに進ませ職につけ
美わしきもの子に与え 古きを父母はまとうなり

己れ生あるその内は 子の身に代らん事思い
己れ死に行く其の後は 子の身を護らん事願う

よる年波の重なりて いつしか頭の霜白く
衰えませる父母を 仰げば落る涙かな

あゝありがたき父の恩 子は如何にして酬ゆべき
あゝありがたき母の恩 子は如何にして報ずべき

あわれ地上に数しらぬ 衆生の中にただ一人
父とかしづき母と呼ぶ 貴き縁 伏しおがみ

起てよ人の子いざ起ちて 浮世の風にたたかれし
余命すくなきふた親の 弱れる心なぐさめよ

さりとも見えぬ父母の 夜半の寝顔を仰ぐとき
見まごう程の衰えに おどろき泣かぬものぞなき

樹静まらんと欲すれど 風の止まぬを如何にせむ
子養わんと願えども 親在さぬぞあわれなる

逝きにし慈父の墓石を 涙ながらに拭いつつ
父よ父よと叫べども 答えまさぬぞはかなけれ

ああ母上よ子を遺きて 何処に一人逝きますと
胸かきむしり嘆けども 帰りまさぬぞ悲しけれ

父死に給う其の時に 泣きて念ずる声あらば
生きませるとき慰めの 言葉交わしてほほえめよ

母息絶ゆる其の臨終に 泣きて合掌む手のあらば
生きませる時肩にあて 誠心こめて揉みまつれ

げに古くして新しき 道は報恩の教えなり
孝は百行の根本にして 信への道の正門ぞ

世の若人よとく往きて 父母の御前にひざまずけ
世の乙女ごよいざ起ちて 父母の慈光を仰げかし

老いて後 思い知るこそ かなしけれ
此の世にあらぬ 親の恵みを

平成三十年三月 写経の会(第五十五回目) 法 話

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