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オウムのお話し 第39回写経の会の法話

オウムのお話し

― 恩を知る ―

そのむかし、ヒマラヤ山中のガンガー河の岸辺に、ウドゥンバラの森があり、数千羽のオウムが住んでいました。

そこには一羽のオウムの王がおり、季節によって自分の住んでいる木の果実がなくなると
葉や枯れ枝、枯れた樹皮を食べ、ガンガー河の水を飲み、決して別の場所には去りませんでした。

彼の少欲知足の生活を見ていた帝釈天は、彼を試すために自分の神通力によってその木を枯らしてしまいました。
そのため木は幹だけが残り、穴だらけになり、風に吹きさらされて立っていました。
そしてその穴から木の粉くずがでてきました。
オウムの王は、その木の粉くずを食べ、ガンガー河の水を飲み、やはり他の場所へは去らずに
暑い日も寒い日も、ウドゥンバラの幹のてっぺんに坐っていました。

帝釈天は、彼がとても少欲であることを確認し、彼に「恩」について語ってもらい、
それが正しければウドゥンバラの木に甘露の果実を実らせてこようと思いました。

帝釈天は一羽の白鳥に姿を変えウドゥンバラの森へ行き、オウムの王がいる木の近くに立つ一本の木の枝にとまりました。
そしてオウムの王に言いました。

「鳥というものは果実のたくさんなる樹木を求めさまようが、あなたは何故この枯れ木に住んでいるのですか。
しかもその木は芯から枯れて、穴からは木くずが出て、今にも倒れそうではないですか。」

オウムの王は、白鳥に向かい、
「白鳥よ、私がこの木を捨てて去らないのは、この木に恩を感じているからです。
苦楽と禍福を共にしたこの木は親族のようなものであり、また善き友でもあります。
生命を惜しみ、この木を見捨てることは友情の道を捨て去るようなものです。」

白鳥の姿の帝釈天は彼の言葉を聞いて大変満足し、賞讃して贈り物を与えようと思いました。
「あなたは友情と慈しみを見事に語ってくださいました。あなたは賢者にも勝ります。お礼に望むものをあげましょう。」

それを聞いたオウムの王は少し考えながら言いました。
「白鳥よ、叶う願いではないとは思うが、もし何かをもらえるとするならば、この木が生命を再び取り戻すようにしてもらいたい。
枝葉が茂って果実が実り、前のように美しくそびえ立つようにしてもらいたいのだ。」

その言葉に再び感心した帝釈天は言いました。
「友よ、果実の豊かになるこの木を再び見るがよい。あなたはこの木と共に住むべし。
枝葉がのびて果実が実り、栄えて美しくそびえ立つこの木と共に過ごすがよい。」

このように言って、帝釈天は白鳥の身体を捨てもとの姿に戻り、
ガンガー河の水を手ですくって、枯れたウドゥンバラの木の幹に注ぎました。
するとただちに木は枝や若葉が茂り、甘い果実が実り、まるで宝石の山のように、美しく輝きながらそびえ立ちました。

オウムの王はそれを見て喜び、帝釈天をほめたたえました。
「今の私の喜びは誰にも想像つかないものです。それと同じ喜びが帝釈天一族におとずれますよう、お祈りいたします。」

喜んだ帝釈天は「いつまでも。」と言葉を残し、自分の住処へ帰りました。

私達はたくさんの恩を受けて生きています。生まれてきたこと。生活できる事。お互い励まし合ったり慰め合ったり出来ること。
その恩を忘れずに報いることは、仏教で最も重んじるものです。
恩を知る人は必ず幸福になると説かれております。
千葉市 日蓮宗 写経 写仏 法話

平成二十八年十一月 写経の会(第三十九回目) 法 話