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猿と一粒の豆のお話し 第35回写経の会の法話

こんにちは、毎日暑くなってきましたが、夜は何故か涼しいですね。
熱中症には気をつけて下さいね。

こちらは慈悲の心と人の縁を、千葉市から伝え広めるお寺 日蓮宗 本円寺のブログです。
今回は第35回 写経の会にてお話しした【猿と一粒の豆のお話し】についてお書きします。

猿 と 一 粒 の 豆 の お 話 し

― 本当に大切なものは ―

昔、ブラフマダッタ王がバーラーナシーの都で国を治めていた時、国境の部族が反乱を起こし、王の国に攻めてくるという悪い知らせが届きました。
季節は雨季で、長い雨が降り続き、川はあふれ、家も作物も水に押し流されるほどの悪天候が続いておりました。

王は反乱軍はもとより、周辺の国に自国の力を見せつけるために、降りしきる雨の中を自ら軍隊を率いて出陣し、国境付近の園に陣営を張りました。

「王様、このまま進軍すれば、じきに川にさしかかります。この雨の様子では兵士達は川の氾濫に巻き込まれてしまうかもしれません。
それにこの状況では反乱軍も攻めては来れないでしょう。ここはこの陣営で兵士達の体力と士気を高め、反乱軍を迎え撃つのが良い策と存じます。」
王様が一番に信頼している大臣が進言しました。
「そうか、それもそうだ。兵を失ってしまっては何の意味も無い。お前の言うとおり、ここで反乱軍を迎え撃つ事にしよう。」

王の命令でしばらく駐留する事になった軍隊は、早速雨よけの布を張り、そして食事の準備にかかりました。
兵士の食事の他に、軍馬のためにたくさんの大豆を蒸し、餌おけの中へ投げ入れたその時、園にいた一匹の猿が、すかさずおけの中の大豆をつかみ、
その手いっぱいに豆を握りしめたまま近くの大きな木に登ってしまいました。

猿は木の枝に腰を下ろして、見ていた兵士達を見下ろすように、一粒一粒豆を食べ始めました。
少しすると、猿の手から一粒の豆がぽろっと地面に落ちました。
猿はその豆を拾おうと、慌てて木から降りようと体勢を変えたその時、ほおばっていた豆と、両手につかんでいた豆すべてをばらばらっと地面に落としてしまいました。

猿は急いで地面に降りて、始めに落とした一粒の豆と、後から落としたすべての豆を、あちこち飛び回って捜しまわりました。
しかし、落とした豆は雨水に流されてしまい、いくら捜してももはや見つかりません。
猿は再び木に登り、千万の大金をふいにした人間のように悔しがり、口をひん曲げてもとの枝に座っておりました。
大臣はその様子をじっと見ておられました。

ちょうどその時、王様が兵士の様子を見に陣営から出てきました。
「あの猿は苦々しげな顔をして下を見ているが、どうしたのかね。」

すると大臣は答えました。
「王様、あの猿は少しばかりの物を取り返そうとして、たくさんの物を捨てしまった知恵のないものです。
一粒の豆を惜しんだために、手に持っていたたくさんの豆をみんな無くしてしまったのです。」と、見ていた事の顛末をお話ししました。
「そうか、愚か者だな。」
「王さま、この大雨の中で大軍を進めていくのは、この猿のようなことになるかもしれないとの、佛様からの知らせかもしれません。」
「うむ、判断を間違えるとこの猿のように、何もかも無くしてしまうのか。
そうか、国境の少数の部族の反乱などに、雨の中を兵を引き連れて進軍するほどのこともなかったな。」

大臣の言葉により大切な事に気がついた王は、その日のうちにバーラーナシーへ軍隊を引き連れて帰ってしまいました。

一方、反乱を企てた部族は、
『王の軍隊は賊を滅ぼそうと王自ら都から出発した。』
といううわさを耳にしただけで、国境から逃げ去っていたとの事です。

人は大切なものを忘れて、目の前にあるものに固執してしまう事がありますね。そのせいで大切なものを失ってしまう事がよくあります。
物だけではなく、自分の心、人との繋がり、ほとけさまの事等々。
私達に大切なものを気付かさせてくれる大臣のような存在はあちらこちらにおります。
よくその言葉を聞いて、大切なものをその手からこぼさないようにしましょうね。

平成二十八年七月 写経の会(第三十五回目) 法 話

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