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第30回 写経の会の法話

こんにちは、こちらは慈悲の心と人の縁を、千葉市から伝え広めるお寺 日蓮宗 本円寺のブログです。
今回は第30回 写経の会にてお配りした教箋と、お話しした法話についてお書きします。

貧 し い 供 え 物 の お 話 し
― 正直者には福来る ―

昔、バーラーナシーの都に近い村では、それぞれの木に宿っている木の神を敬い拝むというならわしがありました。
祭りの日が来ると、村人たちは それぞれ、自分の拝んでいる樹神に様々な供え物をしました。
その村に一人の貧しい男がいました。
この男もそのならわしに従って、自分の拝んでいる一本の木の前へやって来ました。ほかの人々は、花の飾りやにおいのいいお香、
それにおいしい食べ物などをたくさん供えていました。しかし、貧しい男にはそんな素晴らしいものはありませんでした。
男が供えようと持ってきたのは、粗末な菓子と、ヤシの器に入れた一杯の水だけでした。

男は木の前に立って考えました。
(・・・・・神さまは、この上もないおいしいごちそうをいつも食べていらっしゃる。私が持ってきたこんな粗末なお菓子など、食べてくださらないに違いない。
このお菓子は粗末とはいえ、私にとっては大切なものだから、お供えできないのであれば、家に帰って自分で食べよう ・・・・・)。

男はしょんぼりしながら、粗末な菓子と水を持って立ち去ろうとしました。
その時、男を後ろから呼びとめる声がしました。
男が振り返ると、木の枝に神様が姿を現しておりました。
「もどってきなさい。何をそんなに卑屈になっているのだ。」
木の神は、男に向かって優しくほほ笑え、こう言いました。
「なにも恥じることはない。もしお前が長者であれば、りっぱなお供えをしただろう。
しかし、お前は貧しい。貧しいお前がありったけのお金を使い、そして心からの供え物を持ってここへ来てくれた。
私はそれだけでもうれしい。
それなのに、それを持って帰るとはどうしたことだ。お前にとってのごちそうは、私にとってもごちそうなのだ。」
男は申しわけのないことをしてしまったと後悔して、粗末な菓子と水を供え直しました。
すると、木の神はそれをおいしそうに食べながら男に尋ねました。
「男よ、お前は何を願って私を拝むのだ。その願いを述べてみなさい。」
「私は貧乏でございます。ですから、あなたのお助けによって、今のこの貧しい境遇から抜け出したいと拝んでおりました。」
男は正直に自分の気持ちを言いました。
「分かった。お前は貧しいにもかかわらず真心をもって私に供養してくれた。その善業の功徳として、私はお前にいいことを教えよう。」
男がうなづくのを確認して木の神は言葉を続けました。
「この木の周りの土の中には、お金や宝の詰まったつぼがたくさん埋めてある。お前はこのことを王に申し上げ、掘り出したつぼをお城に積み上げるのだ。
王はお前の行いに感謝し、必ず役人にとり立ててくれるだろう。」
そう言い終わると、木の神はすっと木の中へ姿を消してしまいました。

正直者の男は、木の神から聞いたとおりに王に伝えました。王は男と家来たちに木の周りを掘らせ、掘り当てた金銀財宝の詰まったつぼを城へ運びました。
王は男に感謝して言いました。
「独り占めしても、だれにも分らないものを何故お前は知らせたのだ。」
王の言葉を聞いて、男は答えました。
「神さまがご覧になっていらっしゃいますから。」
王は男の正直さに感心して、満足気に言いました。
「お前を、今掘り出したこの金銀財宝を管理する役人にしよう。」
「ありがとうございます。一生懸命務めます。」
男は喜んで引き受けました。そして、それからは豊かで幸せな日々を送ったということです。

佛様も神様も、いつも私達のそばにいます。そして私達の心はいつも自分の心を見ています。
正直でいることが大変な時もありますが、いつかはそれが実を結ぶと信じてください。必ず誰かが見ていてくださいますよ。

平成二十八年二月 写経の会(第三十回目) 法 話

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記念すべき30回目の写経の会は、新本堂にて開催されました。
その様子を画像でお伝えしますね。
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